ご挨拶

 理事長 中村安秀
一般社団法人 日本国際保健医療学会 理事長
(甲南女子大学教授・大阪大学名誉教授)
中村 安秀

 国際保健医療学という比較的新しい学問分野の定義が日本で作られたのは、2001年のことでした。日本国際保健医療学会が編纂した最初の教科書である「国際保健医療学」(杏林書院)の序説に、当時の島尾忠男理事長は以下のように書いています。

「全世界的な立場でみた場合に、健康水準、保健医療にみられる国、地域的な違いや格差が、どの程度以上であれば容認しがたいと考えるか、そのような違いや格差が生じたことにはどのような要因が関連しているか、さらにそれを容認できる程度まで改善するにはどのような方策があるかを研究し、解明する学問を国際保健医療学と定義したい。」

 日本国際保健医療学会(Japan Association for International Health)が1986年に設立されてから30年以上がすぎました。多くの先人たちが実践から学んだものを持ち帰り学会の場で議論し、新しい理論を学んで途上国の現場に出かけ、地域の人びととともに実践を重ねてきました。自分たちの正義と理論をグローバルに押しすすめるという方法とは異なり、時間と人手をかけ、何よりも相手国の人びととの間の相互の信頼関係を大切にした営みでした。また、日本国内で生活する海外にルーツを持つ人びとの健康の格差の課題にも取り組んできました。
 2011年3月の東日本大震災において、海外から多くの支援が寄せられました。グローバル世界のなかで、人と人がつながり、国と国がつながっています。国際的な緊急支援を行うこともあり、ときには緊急支援を受ける側に回ることもあります。私たちは、世界から支援を受けた東日本大震災の貴重な経験を契機に、国境を越えたグローバルな関係性のなかで、双方向のベクトルをもった新しい国際保健医療学のあり方を創造していく使命があります。

 2015年の第70回国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の理念は、「だれひとり取り残さない(No one left behind)」です。格差との闘いを前面に打ち出した国際保健医療学の世界観と響きあうものがあります。
「不易流行」。2018年には40周年を迎えるプライマリヘルスケア(PHC)の原則も忘れることなく視野に入れながら、日本国内外の大きな格差を見据え、実践に結びつく研究の発展が望まれます。そして、日本の地域での実践や研究が世界に広がり、世界各地での実践や研究を日本国内に活用し、グローバル世界の保健医療学の持続可能な循環が展開していくことを期待しています。

 
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